《MUMEI》

いつまでそうしていただろう。


辺りは真っ暗だった。


けれど涙は止まらない。


俺は一人なんだ。


そう思うと、
堰を切ったように涙が溢れてきて………。


自分がとても惨めに思えた。


「なあ、何泣いてんだ?」


突然、背中越しに声を掛けられた。


驚いて振り返ると、
俺と同じぐらいの少年が立っている。


クリッとした二重の大きな瞳が、
不思議そうに俺を写し出していた。


小さな体に似つかない、
大きなスポーツバックを抱えている。


「何か会ったのか?」


そう言うと俺の隣りに座って、
よしよし、と背中を擦ってくれた。


俺は、初対面なのに妙に安心感を覚えて、
その少年に泣き崩れる形で身を任すと、
声を上げて泣いた。


「我慢……してたんだな。」


その言葉に、
更に涙が溢れてくる。


この時、ああ、やっと出会えたんだと思った。


“友達”


そう呼べる人に。

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