《MUMEI》

ジュースを飲み終えた時、丁度タルトが焼き上がりました。

オーブンの蓋を開けると、甘い香りが。

「わぁ‥っ」

「綺麗に焼けましたね」

「美味しそう──」

「冷めたら御切り致しますね」

「味見?」

「はい」

「やったぁ!」

大喜び為さるアンリ様を見て、思わず笑みが零れました。

あどけなさが、本当に可愛らしいです──。

タルトを目の前に、その御菓子が冷めるのをじっと待っている御姿が、抱き締めたくなる程愛しくて、無意識にそっと腕を回していました。

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