《MUMEI》

香織さん、いるかな…



「失礼しまーす」



この気持ちを誰かに相談したくて、私は保健室のドアを開けた。



「あら、ようちゃんひとり??」



イタズラな表情で微笑みながら、香織さんは紅茶をすすめてくれた。



「―…あの、あのね」



私が話を切り出すと、



「…ついに、彼に恋しちゃった??」



香織さんがふふっと笑いながら言ったので、紅茶を噴出してしまった。



「〜〜…っ!!…なん、なんで……!?」


「あら、図星だった??」


「…………」



なんか、遊ばれてるような気が…



「…まあねえ、仕方がないわ。
あんなに素敵な男の子、あたしでもなかなか見ないもの」



ね??と香織さんが微笑むので、私は素直に頷いた。


―…本当、あんなに素敵なひと、他にいないって思う。




……それくらい、好き。



「頑張りなさい」



香織さんは、優しくそう言った。

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