《MUMEI》

放課後。


私達は病院へ向かう前に、
それぞれの家に帰ってから公園で落ち合うことにした。



昼休みに椎名くんからママの手作りケーキを貰った私は、上機嫌だ。




『…お前、よく3つも食えんな』って、椎名くんは呆れてたけど。


椎名くんの家に帰ると、



「お、みつる!!」



店先にいた清水さんが、私を見つけて片手を上げた。



「こんにちは」


「おう。…なんか久しぶりだなあ」



そう言って優しく微笑む清水さんは、両手に酒瓶の入ったケースを持っていた。



「清水さん、これ―…」



言いながら、店の奥から椎名ママが出てきた。



「あら、アンタ帰ってたの」


「あ、今ちょうど…」


「じゃあ、配達頼むわ。…あんたが最近帰り遅いから、
清水さん、手伝おうとしてくれてたのよ」


「いや、俺はみつるの様子を見るついでにと―…」



並んで話す2人を見て、すごくお似合いだなあって思った。



「あれ、蓬田ちゃんじゃない??」



ふいに私の背後に目をやって、椎名ママが言った。


振り返ると、



「ドーモ」



と、軽く頭を下げる椎名くん。



「あらあ!!こんにちは♪―…なにアンタ、デートの約束あったんなら早く言いなさいよ!
…こんな事してないで、早く行きな!!」



椎名ママは態度を一変させて椎名くんに向かって微笑むと、



「いくらでも持ってちゃってー!!」



と、私の背中を押し出した。



『きゃん!』



ゴジラが鳴いた。



清水さんは、そんな私達の様子を優しい眼差しで見つめていた。

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