《MUMEI》

 雛菊は鍵を手に、地下牢へと向かっていた。

「──姫様」

「‥!」

「何方に」

「‥気晴しに歩いてみたくなっただけだ」

「左様でございますか」

 家来は特にそれ以上言及してはこなかった。

 だが雛菊は、かなり気を張り詰めていた。

 城の中では、必ず人目に触れる事になる。

 そのような中で、地下牢に潜り込むのは、至難の業であるに違いない。

(草助‥)

 心の中で呟く。

 必ず助け出すのだと。

 彼を助け出し、また旅に出るのだと。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫