《MUMEI》 「はぁ‥」 草助は溜め息ばかり吐いている。 自分が捕まっているからではない。 あの姫の事が気掛かりでならないのだ。 (あいつ‥今頃どうしてんだろな‥) ふと、雛菊の表情が彼の脳裏に浮かんだ。 真面目な表情であったり、笑顔であったり。 「──姫、か‥」 高嶺の花とは、彼女の事をいうのだろう、と、草助は思う。 (あの簪──まだ持ってくれてっかな‥) 刹那、戸の開く軋んだ音。 見張りだ。 草助は不審に思われぬよう、寝ている振りをした。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |