《MUMEI》

改めて見る二人の姿は、やはりどこにでもいる若者の姿だ。
しかし、黒いダウンを着た男の腹部には、べっとりと何かがついているのが外灯に照らされて見えた。
テラテラと光って見えるそれは、おそらく血液だろう。

ユウゴは視線を彼らの手へと移す。
そこに持たれていたのは銃ではなく、小刀だった。
その刃は赤黒く濡れている。
さっき倒れていた三人を殺したのは、間違いなく彼らだろう。
一体何者なのだろう。
ユウゴは思いながら、同時に逃げ道を探していた。
彼らが何者だろうと、自分を殺そうとしていることは明らかだ。
とにかく、逃げなければならない。

ここの道幅は車が一台通れる程度だ。
目の前の彼らはその道の中央に並んでいる。
それでも両脇には人が通るだけのスペースはある。
しかし、すんなり彼らが通してくれるとも思えない。
どうにかして別の所へ注意を向けなければ。
ユウゴがそう思った瞬間「誰か!」と女の声が響き渡った。
声がした方に目をやると、ユウゴが隠れていた家の門越しに、ゴミ袋を持ったままの女が叫んでいた。
すると、ユウゴを捉えていた男のうち、一人がふらりと動き始めた。
すばやく女の前まで行くと、小刀を振り上げる。
女はすさまじい悲鳴をあげながら、ゴミ袋で男を殴り始めた。
男は小刀振り回しながら、その攻撃に応戦している。
その様子を思わず見つめていたユウゴは、ハッと気づいて視線を戻した。
目の前には男が一人しかいない。
ユウゴは薄く笑みを浮かべて走り出した。

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