《MUMEI》

「草助」

「?」

「忘れ物だ」

 雛菊が差し出したのは黒鞘。

「おお、ありがとな。忘れるとこだった」

 草助の気配が消えたのを確かめると、雛菊は徐に踵を返す。

「姫様」

「──風鈴‥」

「助け‥出されたのですね‥」

「ぁぁ‥。済まぬ」

「また‥行かれるのですか」

「‥約束をしたのだ。あ奴が私を守る代わりに、私もあ奴を守る‥とな」

「では──」

「七日の後に発つ」

 雛菊の瞳には、決意の色が浮かんでいた。

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