《MUMEI》

「はあ〜…」


トボトボと歩く。
一人で歩く。



お母さんはお母さん同士の打ち上げとかで現地で別れた。


私は友達ととても一緒にいられなくて一人小走りに先に飛び出した。

皆が使わないであろうマニアックな道を使いながら、多分かなり遠回りしながら自宅に向かう。


背中には大きなリュック。汗と泥にまみれたユニフォームとグローブ、空っぽの水筒が入っている。


私の右手にはクリームパンの入った袋。
試合が終わると同時に支給されるクリームパン。


最後のクリームパン。



いつもじゃ受け取ると同時に噛り付くクリームパン、全然食べる気がしない。



「………」



「………」



「食うか?」


私の横を通りすぎようとする明らかに野良犬な痩せっぽちな中型犬に私は話かけた。



そう言うなり袋からパンを出し、半分にちぎってからぼとりとアスファルトに落とす。



犬は飛びつきがむしゃらに食いだした。



そんなに美味いか。

くれたかいがあるってやつ?


「ほれほれ!」

数秒で消えたクリームパン。残りの半分もぼとりと落とす。


「礼はいらねーよ、着いてくんなよ〜!」

私を見る事もなく食べる薄汚い犬を残し私はダッシュした。




こうして私の熱い部活動は終わりを告げた。

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