《MUMEI》

 賑わう市の中を、若人が独り歩いていた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

 振り返るが、いつもいたあの姫の姿はない。

(雛菊──‥)

 楽しげに賑う市の明るい雰囲気とは裏腹に、草助の心持ちは憂鬱だった。

『私はまだ‥自分の身を守れるかは分からぬ。現に今日もお前に助けられたのだからな‥。──だが、私は決めたのだ。お前を守ると。此処から助け出すと。‥我儘を‥聞いてはくれぬか』

『お前はここに残るのか』

『直ぐには出来ぬが‥必ずお前の後を追う』

『───────』

『さぁ‥、行け、草助』

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