《MUMEI》 『クーン…』 か細い鳴き声は、ガードレールの下から聞こえてきた。 身を乗り出して覗き込むと、 ゴジラがガードレールの下の木にしがみついているのを見つけた。 「ゴジラ!!」 蓬田が青くなって叫ぶ。 「…ちょっと待ってて!今行くからね!!」 そう言うと蓬田はガードレールに足をかけた。 「おい、待てって!!」 おれは慌てて止めた。 下は結構深い窪みになっている。落ちたら、かすり傷じゃ済まないだろう。 「だって、ゴジラが―…!!」 今にも泣き出しそうな蓬田。 『クーン、クーン…』 リードが木に引っかかって、身動きが取れないようだ。 ゴジラは力なく鼻を鳴らす。 「…おれが行くから」 おれが言うと、 「ううん!!私が行く!」 蓬田は首を振ってまたガードレールに足をかけた。 「…だから!お前運動神経ないだろ!? おれが行った方がゴジラ助けられるって!!」 おれは蓬田を引っ張ってガードレールから身体を離す。 「…でも、もう椎名くんを危険な目に遭わせたくないよ…」 そう言って俯く蓬田に、おれは笑って言った。 「大丈夫だって!!…前にもこんなことあったろ?? おれは、絶対大丈夫。ちゃんとゴジラを助けるから」 蓬田は顔を上げると、 「ありがとう。…お願いします!」 ぺこりと頭を下げた。 「おう!任せろ!!」 おれはそう言うと、ガードレールに足をかけた。 前へ |次へ |
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