《MUMEI》

「おっ邪魔っします!」


颯ちゃんは大声でそう言うと、
灯のついているリビングへ向かっていった。


案の定、父さんはソファに座ってテレビを見ていた。


「なんだ?
騒々しいな……。」


そう言うと、振り返って俺達を睨み付ける。


「ひっ……!」


俺はこれから起こることを想像して、
身を屈めた。


すると颯ちゃんは、
俺を庇うようにして前に立つと、
こう言ったんだ。


「このクソじじい!!」


……颯ちゃん!!


誰に向かって言ってるか分かってんの!?


あとから俺達を追ってついて来た母さんも、
驚いて声にならないようだった。


「誰だ?貴様は……。」


「お前なんかに名乗る筋合いねぇ!!」


「何?」


父さんは、本気で怒っていた。


無理もない。


初対面で、“クソじじい”と呼ばれたのだから。


「人には人の人生があるんだ!!」


「何をいっているんだ?」


「颯ちゃん……?」


「颯馬君?」


颯ちゃん以外のその場にいた皆が、
呆気にとられていた。

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