《MUMEI》

おれはゆっくりガードレールをまたぐと、木に手をかけた。


木は、思ったより細い。



…でも蓬田の体重なら―…


おれは大きく息を吸い込むと、体重をかけすぎないよう注意しながら、
木に足を乗せた。


少し木が揺れて、ゴジラがビクッと身を震わせる。



おれは木を揺らさないようにそっとリードを枝から解いた。



「ゴジラ、来い!!」



手を伸ばすと、ゴジラは少し怯んだように身を縮めた。



「…ゴジラ!!」



上から『おれ』の声―…蓬田の呼びかけが降ってくる。



ゴジラは意を決したように弾みをつけると、
おれの腕に飛び込んできた。



「よっしゃ、」


『きゃん!!』



おれはそのまま腕を持ち上げ、先にゴジラを上にあげる。

蓬田はガードレールの下から腕を伸ばす。



「蓬田!!ちゃんと受け取れよ!」


「うん!」



ゴジラは、しっかりと蓬田の腕の中に収まった。



「ゴジラ、よかった〜…!!」


『きゃん!!』



次は、おれ。



ガードレール下のコンクリートに手をかけたとき。



ばきっ




乾いた音がして、おれが足をかけていた木の枝が折れた。

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