《MUMEI》

「どうされました、姫様」

「‥済まぬが‥もう下げてくれ」

「姫様‥?」

 半分も手を付けずに雛菊が箸を置いた事に、付き人達は皆不安げな表情をした。

「姫様、何か──」

「案ずる事は無い。只少し‥調子が出ぬだけだ」

 雛菊は言い、襖を開け踵を返す。

「──────‥」

 今、彼女が外へ出る事は許されない。

 もし出たなら、草助──あの若人の身が危うくなるのだ。

 とはいえ、心残りがしてならない。

 食欲も失せ、表情には暗い影が落ちている。

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