《MUMEI》

「泣いてるのか、いい歳こいて。」


「混乱してるんだ。」

頭を抱えて瞑想してしまった。


「変わらないな。つむじが三つある。」

よく覚えているな……


「昭一郎は綺麗になった……とか、気持ち悪いよな俺なんかに言われたら。」

どさくさに紛れて何を色ボケてるやら……頭を抱え直した。






「愛知のこと嫌いとは言ってないけど。」


「きらいとはいってない…………。」

なんだが時差ボケが治らないみたいで幻聴が聞こえてきたようだ。
俺達はちゃんと会話になってるのか?


「好きでも無いが。」

冷ややかな対応だった。


「フラれたの、優しく慰めてやったら俺のこと惚れ直してくれたりして……?」

昭一郎の救いになれればいいと、自惚れてしまう。


「無理だな。」

小馬鹿にされた。
下に見られている。


「時間をくれよ、頼むよ。きっと今度は大切に出来るから……」

それならば下手に出よう。与えられる限りの情を尽くすさ。


「そうか、……じゃあ。」


「待て、待って 待って待って下さい!」

昭一郎はどれほど家に帰りたいのか。


「まだ何か?」

露骨に嫌な顔だ。
今にも振り切って帰ってしまいそうで手に力が入る。


「風呂、使っていいから。飯も、卵焼きしか出来ないけどなんとかなるし、客間も空いてるし。
そんな、ぐちゃぐちゃで汚い身なりで………………………………行かないでよ」

行かないで、ずっと居て欲しいと思うのは傲慢か?

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