《MUMEI》
襲撃
「お?なんだよ、楽しそうじゃん」
「全然」
ユウゴはわざと力を込めて応えた。
「由井さん、外、どうでした?」
「ああ、よくねえな」
由井の表情が曇る。
「向こうの商店街までいったんだけど、もう、死体がゴ〜ロゴロ。遠くの方じゃ火事があったみたいでさ、煙がすげえの」
「マジで?つか、消防車とか来んの?」
「いやあ、来ねえだろ」
「……街が焼け野原にならなきゃいいけどね」
 ユキナの言葉に、その場の全員が真剣に頷いた。
「さて、じゃあ、そろそろ飯だ」
 由井は空気を変えるようにそう言うと、奥の女性に合図した。
 ガラガラと台に乗って登場したのは、山積みにされたカップラーメン。
「ま、贅沢は言ってらんないからな。お前らも食え」
「あ、ああ。サンキュー」
「ありがとう」
 二人は素直に礼を言い、カップラーメンを選んだ。


 その夜、由井に勧められるままに、うすいタオルケットを受け取り二人は並んでごろ寝した。
 他にも何人か女がいたが、男と共にごろ寝を嫌がるものは誰もいない。
もちろんユキナもだ。
 こんな状況で文句を言えるわけもない。

 みんなが寝静まった真夜中、静かな空間は突然の爆発によって破られた。
「なんだ?」
 一斉に跳び起きる。
しかし室内は真っ暗で何も見えない。
ただ確かな煙臭さを感じる。さらに混乱した悲鳴や叫び声が響いている。
「なんなの?」
すぐ隣でユキナの声がした。
「こっち来い」
 ユウゴはとりあえずユキナを部屋の奥へ避難させる。
「ユウゴ?ねえ、なんなのよ?いったい」
「俺が聞きてえよ」
 パニックになっている室内に誰がつけたのか明かりが灯った。
「なんだよ、これ」
 思わず声を漏らしたユウゴの目の前には黒い煙を立ち上らせながら、一台のバスが突っ込んでいた。
その下には、さっきまで憎まれ口を叩いていた少年たちが、無惨にも赤い液体を体に纏わせ動かなくなっていた。
「……っ!」
 ユキナはショックのあまり、しゃがみ込んでしまった。
 ユウゴは素早く周りを見渡した。
逃げ惑う人の中に由井はいない。
「由井!」
 ユウゴが叫んだその時、銃声と共にバスの後ろから由井が飛び出してきた。
さらにその後ろからバラバラと人影が追い付いてくる。
 そのうちの一人が由井を執拗に撃っている。
よく見るとその人影は全員、警備隊の装備をしているようだ。
「由井!こっちだ」
 ユウゴの声に反応し、彼はこちらに走ってくる。服は血まみれだ。どこか撃たれたのかもしれない。
 ユウゴは由井の腕を掴むと走り出した。

 確か、奥に非常口があると言っていた。
 他の無事だった人達も、すでに脱出した後らしく、気配はない。
気付けばユキナまでいなかった。
なんとか先に逃げたのだろう。

 背後からの銃撃をかろうじて避けつつ、ユウゴは部屋の奥の壁に穴を見つけた。
「ま、待て」
 穴から出ようとした時、由井は懐から何かを取り出した。
 ピンを抜いたそれを、警備隊の方へ投げると急いで走り出した。
ユウゴもあとに続く。
 脱出して間もなく、熱い爆風を当たりに散らしながら建物は燃え上がった。

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