《MUMEI》

「…椎名くん!!?」



蓬田が慌てておれの名前を呼ぶ。


足場を失ったおれは、コンクリートに右手をかけた状態でぶら下がった。



「…椎名くん、大丈夫!?」


「…おう、―…なんとか」



早く上がらないとヤバい。
腕の力が、足りない。



「つかまって!!」



ガードレールの下から、『おれ』の―…蓬田の腕が差し伸べられた。

左手を持ち上げて、差し出された腕を掴む。



「いくよ!!」



蓬田の掛け声とともに、おれは強い力で上へと引き上げられた。

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