《MUMEI》 無事に引き上げられたおれは、コンクリートの上に座り込んだ。 「…ごめんな、」 小さく謝る。 …蓬田に助けてもらうとか、すげえ、かっこ悪ぃ。 隣に座り込んだ蓬田は、何度も首を横に振ると、 「…よかった…」 と呟いてガードレールにもたれた。 『…きゃん!!』 ゴジラがおれの横にやってきて、躊躇いがちに鳴いた。 …コイツも、蓬田を元に戻したい一心でネコを追ってくれたんだろう。 自分が危険な目に遭うのも省みずに。 「ありがとな」 おれが言うと、ゴジラはぱたぱたとしっぽを振った。 頭を撫でてやろうと手を伸ばすと、腕に痛みが走った。 「いっ、て…」 見ると、コンクリートで擦りむいたのだろう、 右腕に小さな擦り傷ができていた。 ―…蓬田の身体なのに、怪我させちまった… 手を引っ込めようとすると、ゴジラが傷に顔を近づけ、ペロリと舐めた。 いたわるように、優しく。 くすぐったくて、でも少し痛くて、 「…ありがと」 ちょっと、嬉しかった。 前へ |次へ |
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