《MUMEI》

「お前はあ奴に救われ、それが故に行動を共にしていた──、違うか」

「‥兄‥上‥?」

 菖蒲の予測は当たっている。

 むしろ、全てを知っているかのような口振りだ。

「‥何故御存じなのですか」

「風鈴だ」

「‥風鈴‥?」

 雛菊の側近である風鈴が、彼に全てを話したのだという。

「また‥行くのだろう」

「‥父上には‥内緒にしておいては頂けませぬか」

「お前の本望であるのなら‥父上も咎めはしまい」

 菖蒲は静かに言い、雛菊の部屋を後にした。

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