《MUMEI》

(あいつは‥今何処に居るのだろうな‥)

 一言でも、気持ちを伝えておくべきだった、と、雛菊は後ろめたい気分だった。

 彼が完全に城から離れるまでは、追う事が出来ない。

「姫様」

「降りて来て良いぞ、風鈴」

「はい」

 風鈴は、即座に雛菊の前に姿を現す。

「申し訳ございません、勝手な振る舞いを」

「何を勘違いしておるのだ‥?」

「ぇ‥」

「お前には礼を言わねばならぬな、風鈴」

「姫様‥」

「兄上に──話をしてくれたのだろう?」

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