《MUMEI》 しばらくして1階に降りると、とてもいい匂いが漂ってきた。 キッチンに入ると、清水さんが大きな中華鍋を振っていた。 「お、みつる」 清水さんは私に気付くと、コンロの火を止めた。 「チャーハン、作ってたんだ。 最近お前の腕がめっきり落ちたって、すみれさん嘆いてたから」 そう言って困ったように笑う清水さん。 ―…そうだ。 簡単な料理から挑戦しようとしてるけど、 なかなか上手くいかない。 …今までよりは、断然できるようになったけど… 恥ずかしくなって俯くと、 「まあ、そういうこともあるよなあ。 ―…食うか??美味いぞ〜!! 勇作のにはさすがに劣るがな」 『勇作』さん、―…椎名くんのお父さんのことなんだろう。 清水さんは私の肩を軽く叩いて、励ますようにそう言った。 お腹がとても空いていたので、私は大きく頷いた。 前へ |次へ |
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