《MUMEI》

清水さんの作ったチャーハンは、とても美味しかった。



「すみれさん、帰ってこねえなあ」



食べ終わって、私がお皿を洗っていると、
テレビを見ていた清水さんがキッチンにやってきて呟いた。



「…いつもならもう帰ってるのになあ」



時計は、夜9時を指していた。



「…もしかして、何か―…」



清水さんが言いかけたそのとき、



「ただいまぁ〜!!」



陽気な声とともに、椎名ママが帰ってきた。



2人で玄関に向かうと、



「あれぇ??清水さんもいる〜」



と、椎名ママが笑った。



―…酔っ払ってる。



「すみれさん、どこで飲んできたんだ?」



清水さんは、椎名ママを支えながら心配そうな声で訊ねた。



「ん〜??…ふふ、勇作のところ」



椎名ママの言葉に、清水さんが一瞬苦しそうな表情をした。



「…まだ9時なのに、そんなに飲んだらだめだよ」



優しい声で注意する清水さんの目には、哀しい色が宿っていた。

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