《MUMEI》

学校での時間は、いつも通りに流れた。


『椎名くん』として過ごすのに、ほんの少し慣れてきた。



いつも通りに授業を受けて、
いつも通りにお昼を食べて、
いつも通りに小木くんに負けて。



―…でも、祥ちゃんからの視線を感じることが多くなった。



でもきっと、今まで気付かなかっただけなんだろう。

祥ちゃんは、今までずっと、こんな風に椎名くんの姿を目で追っていたんだ。



…私も、充分鈍感だ。



早く戻らなきゃ。


祥ちゃんの、椎名くんへ向かう気持ちを無駄にしないように。

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