《MUMEI》 「おはよう」 「おす」 翌朝の駅のホームで、蓬田と挨拶を交わす。 おれが昨夜見た変な夢のことを話そうか迷っていると、 「…あのね、昨日―…夢、見たんだ」 蓬田が、躊躇いがちに口を開いた。 ―…驚いたことに、 おれ達は、同じ夢を見ていた。 「でも、あんな場所知らねえし―…」 おれが言うと、 「私、知ってるかもしれない…」 蓬田が呟いた。 「―…前、おばあちゃんちに行ったとき、 連れて行ってもらったところにすごく似てるの」 「まだ覚えてんのか??その場所」 「うん、…何となくだけど―…」 「じゃあ、行ってみようぜ。 でも満月って―…」 あの声は確かに、 【満月の夜の11時】 と、言った。 「―…今日だ」 「…え?」 何かを考えるように俯いていた蓬田が、顔を上げて静かに言った。 「―…満月、今日だよ」 前へ |次へ |
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