《MUMEI》

「はい‥、誤解をされたままでは何かと不都合が生じると思いまして‥菖蒲様ならば御理解下さるのでは、と──」

「恩に着るぞ、風鈴」

「──光栄に存じます」

 風鈴は深々と礼をし、再び屋根裏へと戻った。

 雛菊は袂から鏡を取り出した。

 彼女の髪には、あの男から貰った簪が飾られている。

 それを見る度、雛菊は思い出すのだ。

 草助の笑みを、言葉を。

(草助──)

 早く会いたい。

 会って、話がしたい。

 共に歩きたい。

 思えば思う程、どうしようもなく辛くなる。

 だが今は、早く七日が過ぎる事を、只願うしかない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫