《MUMEI》

「さて‥と‥」

 いつものように、空き家に身を潜め横になっていたが、草助はあまり落ち着く事が出来ない。

「ぁー‥何か変なんだよなぁ‥」

 横たえていた体を起こし、草助は外へ出る。

「まだ陽ぃ出てんだな‥」

 橙色の陽の光を眩しげに見つめ、彼はふと足元を見る。

「ぁ‥」

 可憐に咲いた、小さな花。

(雛菊‥)

 草助はしゃがみ込むと、まじまじとその花を見つめた。

「綺麗なもんだな──」

 あの姫のようだ、と思い、草助は穏やかな心持ちがした。

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