《MUMEI》

「‥眠れないのか」

「ぇ‥」

 独り月を見ていた雛菊に声を掛けたのは菖蒲だった。

「兄上も‥まだ御休みになられないのですか」

「‥ぁぁ」

「‥‥‥‥‥‥‥」

「‥その簪──」

「‥?」

「あの男から貰ったのか」

「はい‥」

「成程な」

「兄上‥?」

「大事に持っておけ」

「は、はい‥」

 雛菊はおずおずと頷き、簪を握り締めた。

「‥何時発つのだ」

「四日後の夜明け前には‥発つつもりで居ます」

「あ奴の居場所は分かっているのか」

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