《MUMEI》 「ぉ、月出てんだな──」 いつもならとっくに寝入っている頃なのだが、どうにも眠れず、草助は縁側に出て来たのだった。 「あいつ──もう寝ちまったかなぁ」 あの姫は、今どうしているのだろう。 自分を逃がした事が知れて、何か起きていないだろうか。 「‥大丈夫だよな‥?」 届く筈もない問い掛けは、ゆっくりと闇に吸い込まれて消えた。 月から目を逸すと、若人は薄暗い部屋に寝転ぶ。 だが眠れる筈もなく、再び体を起こすと、大きく溜め息を吐いた。 前へ |次へ |
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