《MUMEI》

 夜明け前、珍しく早くに目が覚めた草助は、まだ寝惚けながらも外を歩いていた。

 人気はなく、物音一つしない。

(‥眠‥)

 殆ど寝ていなかったせいだろう。

 欠伸ばかりが出て来る。

 もし傍らに雛菊がいたなら、だらしが無い、と咎められていたに違いない。

 だが、あの姫は今はいないのだ。

(何か調子狂うんだよなぁ‥)

 今の彼は、何か滑稽な事を言う事も、団子屋に入る事もない。

 ただ、後ろを振り返っては雛菊の姿を捜しているのである。

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