《MUMEI》

「はい、畏まりました」

そう答えて、僕は晩餐の支度の為キッチンへ向かいました。

まだ病み上がりのアンリ様ですが──すっかりいつもの調子を取り戻されて御元気そうにしてらっしゃいます。

屡々扉を開けて覗かれては御声を掛けて下さるのが、僕にはとても嬉しくて、その度に振り向いて笑い掛けていました。

「晩餐の支度が済んだら──何か御相手させて頂きますね」

「いいの?」

「はい、楽しいですし」

「じゃあ、お部屋で待ってるね」

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