《MUMEI》

 草助が牢から出て七日が経ち、その明け方の事。

「本当に‥行かれるのですね──‥」

「ぁぁ‥済まぬ、何かとお前には面倒を掛けるな‥」

「いえ、滅相もございません」

「──風鈴」

「はい、姫様」

「もし私が‥この地位を捨てたなら──‥」

「‥姫様‥?」

「いや、只‥考えてみただけだ」

「──菖蒲様には‥」

「まだ言うてはおらぬ」

「左様でございますか‥」

「一度は必ず戻って来る。そして‥」

 次にまた彼に会う時には民となろう。

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