《MUMEI》

 民となり、あの男の連れとなりたい。

 雛菊がそう思っている事は、風鈴が一番よく理解している。

 皆が認めてくれるかは分からない。

 だが、既に決意は出来ている。

 雛菊は、懐から簪を出し、握り締めた。

「では──‥行って来る」

「はい。御気を付けて」

 風鈴は頭を下げ、名残惜しげな表情をした。

「───────」

 雛菊は只、その表情を見つめるしかない。

「もうじき夜が明けます。どうぞ、御行き下さい」

「ぁぁ‥。有り難う」

 雛菊は微笑を浮かべ、踵を返した。

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