《MUMEI》

「──どうやら‥間に合ったようだな‥」

 その声に、雛菊は振り返る。

「兄上‥?」

「此を持って行け」

「‥これは‥?」

 手渡されたのは、家紋が入った御守。

「宜しいのですか‥?」

「道中、何が起きるか分からぬ。持って行け」

「有り難うございます」

 雛菊は礼を延べ、城を後にした。

 ようやく昇り始めた朝日が、辺りを照らし出す。

(さて、あいつを驚かせてやるとするか──)

 足取りは軽い。

 あの男を想うからだろうか。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫