《MUMEI》

「──さて‥」

(あの男は何処に居るのだろう‥)

 とにかく進むしかない。

 そうすればいずれ、会う事が出来るだろう。

「──草助‥」

「おや、何処に行くんだい? お嬢ちゃん」

 声を掛けてきたのは、以前訪れた団子屋に居た女将だった。

「貴女は──‥」

「前に来てくれたお嬢ちゃんだろう?」

「何故‥私‥、いや、拙者の事を‥」

「買い出しに出て来たものでね。どうだい? 良かったら私の店に」

「今‥持ち合わせが‥」

 雛菊が言った刹那、ぐぅぅ、と腹の鳴る音。

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