《MUMEI》

「おいで」

 女将は微笑を浮かべ、雛菊を促す。

「良いのか‥?」

「勿論だとも」

「ぁ‥、有り難う‥」

 雛菊は女将に付いて行く事にした。

 本当は団子など食べている場合ではないとおもうのだが、どうにも空腹で仕方がないのだ。

「そういえばお嬢ちゃん──」

「‥?」

「あの若人は一緒じゃ無いのかい?」

「───────」

「ぁぁ、ごめん‥おかしな事を訊いたね──」

「今から会いに行くのだ」

 雛菊のはっきりとした口調に、女将は、そうかい、とにこやかに答えた。

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