《MUMEI》

「ええと、次は──」

「ここに置いて?」

「──はい」

「そしたらね、次はこっちに動かして──」

アンリ様は、とても丁寧に教えて下さいました。

「じゃあ、1回やってみようか」

ゲームが始まり、駒を交互に進めていきます。

アンリ様は僕の為に、故意に手を緩めて下さっているようです。

それでいて、とても楽しそうな表情をされています。

僕が不思議に思っていると、アンリ様が御気付きになりました。

「チェスって独りじゃ出来ないでしょ? だから、リュートがいてくれて良かった」

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