《MUMEI》
乙女部屋
「部屋に案内する」

「あ、あぁ」

「また後でお会いしましょう」

「うん!」


ギュッ!


「痛ッ!」

「相変わらず華奢だな」


忍は馬鹿にしたように笑い

俺の手首を掴みながらマイペースに部屋に向かった。

「一人部屋だよな?」


(それにしては広いけど)


通された部屋は、何だか女の子の部屋のようで


カーテンにはフリフリレースがついていて


家具もパステルピンク


ベッドは…


(何か、眠れなそう…)


図書室の絵本にあったお姫様が使うベッドによく似ていた。


ちなみに、何故俺が絵本を読んだかと言えば、今年の朗読ボランティアは、大さんや楓さんが勤める病院で


俺と松本は、小児科病棟担当になったからだった。


「気に入ったか?」


(気に入るかよ!)


「普通が良かった」

「ここは、紫が普通に使っていた部屋だ」

「妹だろ! 女だろ! 俺、男!!」

「ここが嫌なら、もっと可愛い母の趣味満載の部屋しかないが?」

「っ…」


(それは、嫌だ!)


「それか、俺のベッドがキングサイズだから一緒に…」

「ここでいい! ここがいい!」


俺は叫んでいた。

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