《MUMEI》
日焼け止め
「お前が屋敷に来る前に亡くなられたからな」

「へぇ」


(どんな人だったんだろう)


気にはなったが、忍がすぐに飛び込み台に上っていったから、俺は慌てて後を追い掛けた。


「ブッ!」

「忘れてた」


(何だよ)


忍が途中で止まるから、俺は忍の背中に鼻をぶつけてしまった。


「日焼け止め」

「あ…」


(そうだ)


俺の脳裏に薫子さんスマイルの部長が浮かんだ。


俺は一旦護がいるパラソルの下に移動した。


「主役だそうですね」

「うん」

「女装だがな」


(一言多いんだよ!)


俺は忍を睨んでから、日焼け止めを塗り始めた。


背中は…


俺は護を指名したが、あえなく却下され、忍に塗られた。


「ちょっな…」

「ここが一番塗り忘れる」

忍は事もあろうに俺の水着を軽くめくり、境目にあたる部分にも日焼け止めを塗った。


「…感じたか?」

「くすぐったいけど残念ながらそういうのは無い」

「そうか」

「だからくすぐったい!」

身をよじる俺の体をガッシリ固定して忍は日焼け止めを塗り続けた。


「忍。春日家の執事が小麦色でも困るぞ」

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