《MUMEI》
ストーカーは辞めて下さい
「あ、あのっ…」
電車から降りた瞬間、俺は後ろから声をかけられた。振り返ってみると知らない女子高生が少し俯きかげんで立っている。顔が赤い…
なんだか嫌な予感…
「いつも電車で会うたび見てたんです。カッコイイなぁって…」
いつも見てたって…何こいつ、ストーカー?
「す、好きです。私と付き合って下さい。」
はぁ…やっぱり。これで何人目だろう。もうウンザリだ。そのセリフ、聞き飽きてるって。世の中の女はどうしてみんな外見で男をみるのだろう。ヘドが出る。俺は苛立ちながらも、いつもの様にお得意の笑顔を作った。
「ありがと。気持ちは嬉しいけど、俺彼女いるから。ゴメンね。」
この『ゴメンね』のところで少し悲しい表情を作るのがミソ。これで今までの女は全員諦めてくれた。みんな単純だからすぐ騙されてくれる。こいつもすぐ立ち去るだろうと嵩をくぐっていた。
「ウソ!私ちゃんと調べたもん!沢村君、彼女いないって…」
ゲッ!予想外の展開。まさか食い下がってくるとは。ってか、こいつマジストーカーじゃん。調べたって…名前まで知られてるし。
「彼女、本当はいないんでしょ?だったら…」
あぁ〜参った。やばいぞ俺!どうするよ、この修羅場…
「あ、あのさ、学校遅刻するし俺もう行かないと。君もやばいっしょ?時間。」女はハッとして腕時計を見た。赤いバングルの、いかにも女の子って感じのかわいい時計だ。
「うわっもうこんな時間?」
ホッ。これでなんとかごまかせるな。
「じゃあね。」
俺はニッコリと女の子に手を降ってその場から逃げようとした。その時だ。
「今日、終わったら校門で待ってます!いい返事くださいね。」
ウソ……だろ
嬉しいそうに去って行く女の子の後ろ姿が、魔女に見えた。
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