《MUMEI》
第八華
 暫しの後、団子を手に雛菊は歩いていた。

 店で休んでいってはどうかと女将が言ってくれたのだが、雛菊はやはりじっとしてはいられなかったのだ。

(夜までに‥行ける所まで行く他あるまいな‥)

 途中何人かの武士とすれ違ったが、あの男では無かった。

(やはり簡単にはゆかぬか‥)

 心細さに、きょろきょろと見回してみるものの、やはりあの男はいない。

「何処に居るのだ‥? 全く‥」

 何をこんなにも苛々しているのだろう、と思うが、最早自分自身でも分からないのである。

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