《MUMEI》
これから
しばらく、俺達は無言だった。


時計の音だけが、静かな室内でやけに大きく聴こえた。


「いつまでいればいい?」


護は俺にとっても大事な人だ。


(いつまでだっていてやる)


そう思っていた。


なのに。


「明後日ボランティアだろう。明日には送る」

「な…」

「最期は、俺が看取る。

俺が、一人で」

「で…」

「父の希望だ」

「護の」

「そうだ」

「そうか…」


それ以上は、何も言えなかった。


「あの婆さんもそうだったが、お前に皆死に行く姿を見せたくないようだな」


ズキン


(それは、俺が嫌いだからか?)


「嫌いだからではなく、むしろ逆だと思うがな」


ドキッ


珍しく、忍が優しい口調になったから


(悔しいけど…)


「惚れたか?」

「誰が!」


(ちょっと見直すとすぐこれだ!)


やっぱり忍は忍だった。


「忍は俺に看取ってほしいか?」

「俺はお前より先に死ぬつもりはない」

「いや、普通先だろ?」


(年上だし)


「俺は、普通じゃないからな」





ニヤリと笑った忍は本当に長生きしそうに思えた。

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