《MUMEI》 先生とのやり取り〜海視点〜 あの事件でだいぶ辛い思いをした升坂先生に、丸井 陽奈子のことを聞くのは正直酷かもしれない・・・。 先生の顔を見ると聞くのを躊躇ってしまう。 しかしそんな俺の考えを見透かしたように、升坂先生は口を開いた。 「何か聞きたいことがあるから、こんなところまで来たんだろう?」 俺は先生の質問にゆっくりと頷く。 「丸井 陽奈子は・・・・・どこに引っ越したんですか?」 俺の質問に先生は一瞬目を見開いたが、すぐに険しい表情になった。 「それは教えられない・・・ 丸井のご両親に誰にも教えないでくれって頼まれてるんだ」 すまんなっと言葉を添えて先生は頭を下げる。 「どうしても教えて頂けませんか?」 俺は先生の目を睨むに近い形相で見る。 先生は怯む様子もなく頷く。 「俺、教えて貰えるまで何度だって来ますから!」 俺のその言葉に先生は面食らったような顔をしたが、視線を下に落としふぅ―っと大きく息を吐いた。 「何度来たって俺の答えは変わらんよ」 そんな先生に俺は言葉を返す。 「そう言われて諦めるぐらいなら、ここまで来てません・・・ 先生が何て言おうと、教えて貰えるまで諦めません。」 揺るぎない瞳でまっすぐ先生を見据え、俺はピシャリと言い切る。 先生も俺をじっと見つめ、重い沈黙が流れる。 何秒か沈黙が流れた後、先生はフイっと目を逸らし 「勝手にしろ」っと1言だけ言い残し職員室へ戻って行った。 俺は大きく息を吐きその場にしゃがむ。 取り敢えず・・・今日は帰るか。 俺は立ち上がり膝を1回叩き歩き出す。 駅に着くと丁度電車があったので、その電車に乗り込んだ。 前へ |次へ |
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