《MUMEI》

 行き来する人々の中に、雛菊が捜す男はいない。

「──────‥」

 埒が明かぬ、と思い、ひとまず立ち止まってみる。

「‥居ないか‥」

 離れ離れになってから、既に七日。

 せめて会う場所位は決めておくべきだったと、後悔してももう遅い。

(これではいつまで経っても会えぬでは無いか──‥)

 だが、あの男の事だ。

 もしかしたら、ひょっこりと後ろから現われて肩を叩いてくるのではないか、などと考えてもみるのだが。

 どうやらそうはいかないらしい。

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