《MUMEI》

「セ――ッフ!!」



遅刻ギリギリの時間に、瀬田くんが教室に駆け込んできた。



「おっはー、みつる!」



そして、にこにこしながら私の元へ駆け寄ってきた。



「おはよう」


「コンビニでジャンプ読んでたら時間忘れてたわ〜!!」



けらけらと笑う瀬田くん。



「出席取るぞー」


「お、やべ、まっすー来た」



まっすーの声に、慌てて席に着く瀬田くん。



…そういえば事故が起きるまで私、
瀬田くんとも喋ったことなかったなあ…



そんなことを考えていると、ふといいこと(?)を思いついた。



―…昼休み。



お弁当を開いて、



「うっわ…今日の弁当、昨日のお好み焼きそんまま入ってる!!」



と嘆きの声を上げている瀬田くんに、訊いてみる。



「…金原って、どう思う??」



すると、瀬田くんはお好み焼きをつつく手を止めてこっちを向くと、



「へ??」



と、間の抜けた声を上げた。



「―…だから、金原律子のこと。
……どう思う??」



お節介かも知れないけど、
リッコはすごく瀬田くんの気持ちを知りたがっていた。

…だから、訊いてみた。



「どうって、おま、―…」



言いかけて、瀬田くんはふと口をつぐむ。



「……??」



どうしたんだろう??


しばらく沈黙が続いた後、瀬田くんが再び口を開いた。



「…もしかしてお前、金原のこと好き、とか言わないよな??」



眉根を寄せて、真剣な顔をした瀬田くん。



私が慌てて首を横に振ると、



「―…お前は好きになったらダメだかんな!!」



瀬田くんはちょっと口を尖らせてそう言うと、
お好み焼きを口いっぱいに頬張った。



…よかったね、リッコ。


嬉しくて、自然に笑みがこぼれてしまった。

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