《MUMEI》

 結局この日も、草助が雛菊と出くわす事はなかった。

「ちゃんと飯食ってんのかな──あいつ‥」

 最早、己の事は何一つ気には掛けていない。

『さぁ‥、行け、草助』

「──行ったはいいけど‥‥‥」

 どうするべきであるのかが、分からなくなってしまった。

 必ず後を追う、そう言っていたあの姫は、今、どこにいるのだろうか。

「──ちと休むかな‥」

 歩き通し、碌に食事もしていない若人は、荒ら家で暫しの間休息をとる事にした。

 だが暫しのつもりが、完全に寝入ってしまったのである。

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