《MUMEI》

「いいけど…なんで??」


「いいから」



訝しげな椎名くんを引っ張って歩き出す。



「―…椎名くん、お父さんのこと、どう思う??」



歩きながら、問う。



「どうって―…優しい親父、だったと思うよ」


「じゃあ、」



私は立ち止まると、椎名くんに向き直った。



「…じゃあ、清水さんが椎名くんのお父さんになるのって、
―…どう思う??」



私の質問に、椎名くんは目を見開いた。



「―…は?」


「…清水さんが、椎名くんのお父さんになること、どう思う??」



私は、繰り返した。



「…は、それって―…うちのお袋と師匠が―…」


「…結婚する、ってこと」


「………」



単刀直入に言う。


椎名くんには、はっきりした言葉が1番いい。



「―…まじで??」



私は、椎名くんの言葉に頷いた。



「でも、あの2人は迷ってるの。
きっと、椎名くんや椎名くんのお父さんのことで…。
たぶん、結婚するつもりはないんだと思う。
―…椎名くんの気持ちは、どうなの??」



私が訊ねると、椎名くんは、
考え込むようにしばらく目を閉じた後、ゆっくりと目を開けた。



「…ちょっと、行ってくる」


「―…うん!!」



椎名くんは、道場に向かって駆け出した。

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