《MUMEI》

 腕を二ヵ所、背と肩をそれぞれ三ヵ所斬られた。

「──っ‥、──」

 何故切り掛かってくるのか。

 賊であるならば、この荷物を奪えばそれでいい筈だ。

 だが相手は、只刃を振り翳す。

「‥おい‥何の真似だよ」

 返事はない。

 代わりに、もう一撃。

(本気でまずいな‥)

 片腕は最早機能しない。

 残った片腕で、向かってくる刃を受け止めるしかない。

 相手の方が圧倒的に勝っているように、彼には思えた。

 だがそれは、この男が普段の力量の半分も出せていないからなのだが。

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