《MUMEI》

「‥お前──‥」

「動くな」

「──ぇ」

「‥今は只──黙って私に守られていろ」

「‥雛菊‥?」

「草助」

「───────」

「案ずるな。──つい先刻も‥二人を相手してきた所だ」

 雛菊は言い、刃を受け止めていない方の左手に構えた簪の切っ先を、相手の喉元に突き出す。

「逃げるなら今の内だぞ」

 その眼は、真直ぐに相手を睨んでいる。

 怒りの色を浮かべて。

「この男にこれ以上手を出すな」

「おい、雛‥」

「黙って守られていろと言ったのが聞こえなかったか」

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