《MUMEI》

(こいつ──よく俺の居場所が分かったもんだな‥)

 草助は、ただ黙り込んでいるしかない。

 雛菊の背を見つめて。

 雛菊は彼を庇うようにしながら、相手と対峙している。

(こいつは‥何を考えておるのだ‥?)

 向かって来ない相手に、雛菊は些か戸惑っていた。

「貴様──‥何者だ」

 だが、答える必要は無いとばかりに、その男はただ姫を見据えている。

 やがて刀を下ろすと、男は雛菊に背を向けた。

「何処へ行く」

 だがやはり返事はなく、男はゆっくりとその場を去って行った。

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