《MUMEI》
女好きって羨ましい
「はぁ…」
あまりの気の重さに思わずため息をつく。
どうすっかなぁ。校門で待ってますって。あの女、マジ有り得ねぇし。
考えたらまたムカついてきた。
「どしたの?沢村。浮かない顔して」
寺田が俺の顔を覗き込みながら言った。コイツとは小学校の頃からの付き合いだ。所謂幼なじみってやつ。茶色に染めた短い髪をツンツンに立てて、耳にはピアスがジャラジャラ。いかにもヤンキーって柄だが、実はお調子者で男女問わず人気者。俺もコイツの事は嫌いじゃないが、ただちょっと悪癖があって…
「はは〜ん、さては何かあったね沢っちゃん!」
『沢っちゃん』。寺田はふざけているとき、俺をそう呼ぶ。
コイツ絶対おもしろがってるし。
そう思いながらも、仕方なく今朝の事を話してやった。
「またかぁ!これで何回目だよ?モテるねぇ、沢っちゃん!」
「でかい声だすなよ。」
寺田はこのての話になるといつも声がでかくなる。
「ゴメンゴメン。でさ、その子可愛いかった?」
出た!
「全然。」
俺は即答した。実は結構可愛い方だったんだけど。
「ちぇ。残念だなぁ、オレの事紹介してほしかったのに。」
「お前彼女いるじゃん」
「彼女は彼女だろ!」
…そういう事胸張って言うなよ。
「寺田、俺はお前が羨ましいよ。」
「へ?何?彼女いる事が?」
「じゃなくてさ…」
「じゃあ何がだよ」
寺田は気になって仕方ない様子だったが、もうタイムアップだ。一限開始を報せるチャイムがなった。
『異常な程の女好きってことがさ。』この言葉をもう一歩のところで飲み込んで俺は鞄から数学の教科書を取り出した。
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